「ル’ロワ'デスパーニュ」には、30種類（しゅるい）近（ちか）くのビールが用意（ようい）されていた。

カウンターのところに、マッチ棒（ぼう）を巨大（きょだい）にしたようなレバーが七つ。これがドラフト（生）ビールで、左端（ひだりはし）のスコットエール以外（いがい）は、ベルギーの地（じ）ビールだ。このカウンターに立（た）ち、3種類注文（ちゅうもん）して、ぐびぐび味見（あじみ）した後（のち）に「うんこれがいい。これをあちらのテーブルに運（はこ）んでくれ」と頼（たの）んでいるおじさんを見（み）かけた。「利（き）きビール」も、この地の楽しみの1つなのだろう。が、こんな風（ふう）に一気（いっき）にたくさん飲む人は、むしろ少数派（しょうすうは）で、たいていの人は、　　ちびちびと味（あじ）わっている。ごくごく飲んでしまうなんて、ビールに対して失礼（しつれい）だ、とでもいうように。

　　　　　（俵　万智（たわらまち）「首都ブリュッセルのカフェでビール三昧（ざんまい)」《WINDS》ｐ３０より）

「ぐびぐび飲む」「ちびちび飲む」「一気に飲む」　「ごくごく飲む」

「どう」「どのように」「どんなふうに」などの動作のようすがどのようなものであるかわかる副詞。